葛木のディープバリュー投資ログ

投資は自己責任です。だからよいのです。

【実験と考察】分散投資とパフォーマンスの関係について(過度な分散はダメなのか?)

皆様こんちには、葛木です。久しぶりの投資成績でない記事です。

投資に関する本やXのポストで、分散投資は大事だけれど過度な分散はパフォーマンスを落とす、という主張をよく見かけます。今回はなぜ分散しすぎた投資がパフォーマンスを落とすのかについて、私なりに実験して考えたことを書いていきます。

なお、以下を見てもらえばわかる通り理想化された状況での実験となりますので、現実の状況とは異なる可能性もあることに注意しておいてください。

実験してみた

仮想の市場を設定し、凄腕、凡人、ド素人の3人の投資家がそれぞれ指定の銘柄数に分散投資した場合、どれくらいのパフォーマンスとなるのか実験しました。設定は以下の通りです。

  • 市場の設定
    • 20銘柄に1銘柄の割合で2倍になる株がある。また、同様の割合で半値になる株がある。その他の銘柄は1%上昇する。よって、市場全体に投資した場合は(100%-50%+1%×18)/(1+1+18)=2.5%のリターンとなる。
  • 投資家の設定
    • 3人とも自信のある銘柄順に投資していき、指定の銘柄数まで投資する。今回は5, 10, 15, 20, 50, 99銘柄の6パターンとした。
    • 3人とも最も自信がある銘柄が2倍株となる確率は50%とした。
    • 2倍株的中率は、有望と考える銘柄の順位が下がるにつれて、以下の式で減衰していくこととした。
      • x位の銘柄が2倍となる確率=(a-b)×c^(x-1)+b
        • a:最も自信がある銘柄の的中率。今回は50%。
        • b:あてずっぽうで2倍株となる確率。今回は5%。
        • c:投資家の能力に依存するパラメタ。今回は以下で設定。
          • 凄腕:0.9
          • 凡人:0.6
          • ド素人:0.1

2倍株的中率の減衰はグラフで描くと以下のようになります。横軸は自信がある銘柄の順位(0から始まっています)で、縦軸は2倍株的中率です。

この設定だと凄腕は20位くらいまででもあてずっぽうよりはよい精度で2倍株を当てられる一方、ド素人は3位以下になるとあてずっぽうとほぼ同じ確率となります。

この設定で1000回の投資機会があった※として、実験してみます。
※それぞれの投資家がそれぞれの銘柄数で分散投資をして、毎年のリターンを計算。それを1000年分集計したとお考え下さい。

結果

まずは凄腕の結果です。

縦軸が投資リターン(%)で、左から5(紺), 10(橙), 15(緑), 20(青), 50(紫), 99(黄緑)銘柄に分散投資したときのパフォーマンスの箱ひげ図です。分散銘柄数が多いほど全体的にパフォーマンスが落ちてますね。また、凄腕のためか多く分散したからといって運の悪い場合のリターンがそれほど変わっていません。本当に実力がある人は過度に分散するのは悪手でしかないようです。

 

次に凡人の結果です。

こちらも銘柄分散数が増えるほどパフォーマンスが落ちました。しかし、凄腕の結果と異なるのは、分散数が多いほど運の悪い結果がましになったという点です。これは、相当の自信がなければ(自分が凄腕でなければ)集中投資は避け、パフォーマンスを犠牲にしてもよいならなるべく分散すべきという教訓に合致します。

最後にド素人の結果です。

たしかに分散するほどパフォーマンスは落ちていますが、正直ほぼ変わらないと言っていいでしょう。これは考え方によるかもしれませんが、ドへたくそは分散によるパフォーマンスの減少よりも成績の安定を求めて多く分散した方がいい気がしますね。

結論

凄腕なら集中投資して、凡人なら適度に分散する、ド素人ならなるべく分散させる(つまりインデックス投資)という結果が導かれました。もちろん、これは仮想的な市場であり現実はもっと複雑であるため、これが正しいと言い切ることはできませんが、大外れもしていないんじゃないでしょうか。

 

さて、これを受けて私はどうするかというと、何も変わりません。少なくとも凡人であれるように市場に向き合い、適度な分散投資を心がけるのだと思います。